この記事は,ひまプロ談話室 Advent Calendar 2025f の第5日目の記事になります.
※「ひまプロ」とは「ひまじんプログラマーの週末エンジニアリングレッスン」というポッドキャスト番組の略です.3名のパーソナリティが雑談しつつ,テーマについて深堀りする番組で,とても学びの多いので是非お聴きくださいませ(=゚ω゚)ノ
こんにちは.コードを書くより喋るのが好きな EM(Engineering Manager),Keeth こと桑原です.
私は株式会社カミナシで EM挑戦2年目になります.正直なる前と,なった後で「こんなにもギャップがあるのか!」と最初は面食らったのが懐かしいですが,今も EM としてバリバリ活躍できているかと言われると怪しい… EM というロールの複雑さと言うか,役割の難しさを痛感する日々です.
とはいえ,曲がりなりにもマネージャーとして約1年半走った今,EM になりたての過去の自分に何かアドバイスするとしたらどんな言葉が出てくるだろうか?を振り返りも兼ねて考えてみました.これが今 EM に挑戦している方,EM にキャリアチェンジを検討している方の背中を少しでも押せたらなと思っております.
前提
筆者である私の今までの経験も書き残しておきますと,EM というポジションは現職が始めての挑戦となります.私がこれまでに経験した(広義の)マネジメント業務を担うポジションとしては以下の3つです.
PjM
いわゆる Project Manager.案件のタスク管理やリソース管理,顧客折衝
Tech Lead
エンジニアチームや組織に関する統括.技術選定,技術投資,設計に関する相談やレビュー,組織運営1
Lead Engineer
Tech Lead と対を成すポジションで,プロジェクト・案件のリード.プリセールスなどの商談,要件定義,設計・開発(ここは Tech Lead がいれば分担することもある).案件によっては PjM がいなく,旗振りを行うことも
見ての通り,ピープルマネジメントは今まで一度も経験したことがありません.特に,前職の株式会社ゆめみでは評価制度そのものがなく2,誰かを評価したことは現職で初めての経験となります.
ちなみに,ゆめみ社で技術担当取締役,執行役員の大任を配すこともありましたが,どちらかと言うとマネージャーというロールとは求められるものが違いましたので除外しています.
EM って何する人?EM のミッションって?
ここからが本題.
EM というポジションについて触れた人が一度は通る問いだと思います.私が尊敬するいくおさんの,「結局のところ、エンジニアリングマネージャーとは何者なのか」というブログからお借りすると
マネジメント対象とするエンジニアチームの価値を最大化する
こういうミッションを持った人です.一言で言えばこうなんですが,いざ実践するとなるとかなり抽象的でイメージし辛く,「で,具体的に何すればええのん?」となると思います.しかし,具体的なアクションはチーム次第なため,人によっても,またタイミングによって異なります.
もう少し具体に落とし込んだものとして,レクター代表の広木さんの「エンジニアリングマネージャ/プロダクトマネージャのための知識体系と読書ガイド」という記事を見ますと,どうやら以下の4つ
プロダクトマネジメント
プロジェクトマネジメント
テクノロジーマネジメント
ピープルマネジメント
のマネジメントを行うと良さそうです.
もう少し噛み砕いてみましょう.弊社のエンジニアリングマネージャーの JD が参考になると思いますので,引用します.
■プロジェクトマネジメント
- スクラムをはじめとする開発プロセスを深く理解し、適切なスプリントゴールの設定、日々の “透明性、検査、適応” を通じて継続的に改善が進むサイクルを確立します。
- エンジニアリングチームの作業に支障をきたす外部ステークホルダーからのコミュニケーションや依頼の流入を仕組みによってコントロールし、開発に集中できる環境を整えます。
■テクノロジーマネジメント
- チームが適切な技術選定・方針決定を行えるよう、意思決定におけるガードレールやエンジニアの良き相談相手として機能し、技術的負債や将来的なリスクを見据えた判断を支援します。
■プロダクトマネジメント
- プロダクトの仕様や背景にあるユーザー価値や事業的価値を理解し、エンジニアリング観点での論点整理・仕様検討などに積極的に貢献します。
■ピープルマネジメント
- 採用:組織に必要な人物像を定義し、採用活動に主体的に関わることで、強いチームをつくる基盤を築きます。また、認知拡大のための社外アウトプット(ブログの執筆や登壇)も自ら率先して行います。
- 育成:エンジニアの Will(やりたいこと)とチームの課題を理解し、それぞれが成長し活躍できるよう適切な育成計画を設計します。
- メンタリング:メンバーがポジティブに働き続けられるよう、日常的なメンタリング・フィードバックを通じて心理的安全性とエンゲージメントを高めます。
はい.初めてこれを見た時「これ全部できる人なんているの…?」というのが第一感で,まさにそんなスーパーマンな活躍を EM というポジションには求められているのか!と恐れおののきましたが,大丈夫です.自分の見たところそんなスーパーマンは一握りです(笑)
また,広木さんの記事内にもありますが,まずは弱めのEM定義である「ピープルマネジメント」と「テクノロジーマネジメント」から入るのが良いと思います.チームによってはPM(プロダクト,プロジェクト)のロールを担う人がいることが多いため.
EM として何から始めればいいの?
これも自分は最初は悩みました.CTO に相談したり,別チームの EM や,外部の勉強会にも参加して相談してみたりしましたが,皆さん意見が異なるからです.それくらい EM というロールは流動的と言うか,自分のいる場に応じて柔軟に動くことが求められます.
しかし,私がお話させていただいたすべての方に共通する役割がピープルマネジメントです.つまりは「目標設定」と「評価」の2つだけは必ず担うことになります.これはタイミングなどに左右されません.
ということで,私が駆け出し EM にまずはじめに着手するものというと,やっぱり 1on1 になります.最初は不慣れでも良く,なんなら雑談しかできなくても良いです.しっかり一人ひとり目の前のエンジニアと向き合うことが肝要です.やっていく中で,自分の 1on1 のプラクティスを固めつつ,各エンジニアメンバーがどうやったら活躍できるか,会社に貢献できるのか,を一緒に考えて行けるようになりましょう.
慣れてくると,途中で「何となく自分流に 1on1 をやっているが,これで本当に良いのかな?」という疑問が湧いてくると思います.これは正しい成長だと思っていて,ある程度自分の型ができてきて,振り替えれる余裕が生まれている証拠でもあります.そんなときに見るおすすめなのがこちらのガイドラインです💁3
ホームにも記載があるとおり,コミュニティメンバーによる集合知ですので,おそらくあなたの疑問に回答する何かがあるかもしれません.人それぞれ価値観や考え方が異なりますので,ドンピシャの答えや画一的な答えは存在しません.だからこそ EM というポジションに就いた人はいろんな悩みと格闘することになります.そんな時,こういうガイドラインはあなたの助けになると思います.
大事なことは,1on1 をすることではなく,1on1 を通してエンジニアとの関係,信頼を構築し,エンジニアが何でもオープンに相談できるようなマネージャーになること,1on1 を通してエンジニアが成果を出せるよう手助けをすることです.
EM として目指すものは何?
ミッションは分かりましたが,では成果として何を果たせばよいか?
わかりやすく言えば,マネージャーはメンバーが各自のレポートラインの評価者の期待を上回る結果を出すようサポートすればよいのです.そうすれば,結果としてメンバーの給与が上がったり,ポジションが上がるでしょう4.
そして,メンバーが期待を上回る活躍をするためには,その環境であるチームビルディングも不可欠です.これまた抽象的な言葉になりますが,極論,マネージャーは強いチームを作ることが至上命題となると今の自分は考えています.
強いチームとは何か?ですが,自分としては
高い生産性や品質を維持した価値提供ができること
それらを阻害するボトルネックを特定し,その解消に自発的かつ持続的に改善できること
社内外問わず関わる人に良い影響を与え,共に学びあい,成長できる関係を築けること
だと考えています.もちろん「強い」の定義も人によって,またチームによって考え方は異なりますので,それも含めてエンジニアと一緒に考え,それを実現するためのリーダーシップを発揮することが求められます.
チームが強くなれば EM というポジションは何をするの?
昔の自分は,自立的・自立的な強いチームにスクラムマスターは不要だと考えていました.それと同様に,EM というポジションもチームが醸成したら不要ではないかと.不要になったら違うチームのテコ入れやチームビルディングにまた奔走すれば良いと.
しかし,今の自分の上司(あんまこの表現はしっくりこないが,レポートラインの上の人)との 1on1 でこの考えを話してみたときの回答が,こうでした.
あなたがいなければチームは良くても 100% の成果しか出ない.あなたがいることでチームの成果が 120% 以上に引き上がることを会社は期待しているのでは?
これはかなり頭をかち割られましたね.確かに,そりゃそうだなと.わざわざ会社が高い給料を払って EM というポジションを置いている意味を考えたらわかることなんですが,私は気付かなかったので,この言葉はとてもありがたかったです.
これは駆け出しの EM の方だとしても,常に頭の片隅に意識しておいて良いなと思います.チームが強くなり,安定してデリバリー・ディスカバリーが回るようになると,途端に EM としては明確にやることがなくなってきます.強いて言えば採用くらいですか.そんなときにこの言葉に立ち返られると良いかもしれません.
また,自チームを超えて,横断して貢献すること.つまりチームではなく組織の成果を出しに行くのも一つでしょう.会社が儲かれば結果としてあなたも給料が上る可能性があるのですから.
最後に
多くの方が仰っていますが,エンジニアマネージャーというポジション,ロールは多種多様な課題に直面することになります.今まで出会ったことない悩みとの格闘の連続でしょう(苦笑)
それでも多くの企業が EM というポジションを設けて,その重責を担う人に期待もしています.それくらい価値のある役割なんだなと,2年目になっておぼろげに理解できてきました.
その難しいポジションを,会社はあなたなら託せると信頼して任命していますが,いきなり成果を出すことは期待していないでしょう5.それこそスーパーマンでもすぐに成果は出せないと思います.チームを作るのはそれくらい難しいことです.
なので,困難な道ですが根気強く挑戦し続けるしかないです.とはいえ,多くの EM たちも,実は同じように悩んでいたりもがいています.そういう時こそコミュニティを頼り,相談してみましょう.あなたの経験が誰かの悩みの解決につながるかもしれません.お互いにオープンに助け合って前に進めれば良いなと願いつつ.
ではでは👋
もちろんエンジニアでもあるため,実装やテストも担います
元々は評価制度は存在しました.年2回の目標設定と上長による評価がありましたが,途中で抜本的な改革があり,上長という概念がなくなったため,他者による評価制度は廃止となりました
メンバーによっては給与が上がることはWelcomeですが,ポジションはステイしたい人もいるかも知れません(笑)
早くても半年後,1年後くらいかなと思います



